ポップアップの歴史に学ぶ

こんにちは、pansのいぬかいです。

「ポップアップ」というのは大きな壁面が簡単に作れるポータブル什器の1つの名称です。蛇腹のフレームが開いて、マグネットでグラフィック面を取付けていく、というD.I.Y型ポータブルシステム。このタイプが日本に入ってきたのは古くて、UNION(労働組合)があって人件費の高いアメリカで普及し、アメリカ及びイギリス製のシステムが日本に輸入されてきました。

その歴史を見ると、ある「進化」と「時代の流れ」が分かって面白く参考になるのでご紹介します。

恐らく日本でも固有名詞では有名なInstandという製品があります。日本では東邦企画株式会社という土木建築、建築用資材販売を主な業務内容とする日本橋の会社が輸入代理店になっています。

まずは初期のタイプ。僕も昔アメリカの展示会でよく見かけました。壁面にはカーペット素材が使われています。

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このタイプが日本人にも受けが良かったのは、既存のパネルがベルクロ=マジックテープ=でペタペタと壁に貼る事が出来たからです。 しかし飽きも早くパネルをたくさん貼るのでセンス的にはちょっと・・・という部分がありました。

そして全面グラフィック印刷できるタイプが登場。

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固い素材でプリントした後裏側に特殊パーツを付ける必要はありますが、インパクトがアップしました。今でも主流ですね。

そして、面倒くさがり?!やさんの人向けに、最初からファブリックがベルクロで付いてしまっているタイプが登場。これなら、開いてジョイントするだけなので、設置も片付けも従来のタイプの半分以下の時間で作業完了です。

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 このタイプは弊社で販売しているSOFTEXPOという商品と同じです。ポイントと問題点は収納時間が長いとシワになる、という点。 そこで、シワになりにくい新素材ファブリック等が開発される必要があるわけです。

似たようなシステムでアメリカとイギリスにNimlok(ニムロック)という老舗ディスプレイ会社もあります。こちらのYoutubeに組み立て動画があるので見てみたい方はどうぞ。 この手のムービーは簡単にできますよ! というのがPRポイントなので、ほとんどのムービーは女性の方が登場します(笑

以上見てきたように、ポップアップというポータブル什器もグラフィック部分はファブリックへと進化してきました。この流れは下記写真でみるような、ブランドショップファサードの写真やグラフィックにも大きな影響を与え始めています。

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いままでは、銀塩写真の現像を主に行ってきたいわゆるラボ中心のプリント会社さんによってスクリーンプリント等をした大きな「アクリルの板」をはめ込んでいました。もちろん蛍光灯。それが昨今LEDに置き換えられるタイミングで、重くて施工と運搬にお金がかかる今までの方法が見直しされています。 きっかけはヨーロッパ初の大手ブランド。 彼らは2年前からファブリックを使った、「簡単にいつでも交換できる」システムの採用を始めています。その流れが香港と日本でも始まってきています。

従来大型写真現像を得意としてきた出力会社さんは、「ファブリック・テキスタイルへのプリント」という点は大きな遅れを取っています。 事実、UVインク対応出力機は導入済であるものの、大型の昇華転写プリンターは未導入の会社が多いようです。 昇華転写はシルクスクリーンとは違い、製版不要で1枚からでもデジタルでプリントできます。

ちょっと逸れますが、インクがものすごい早さで進化しているので、併せて印刷可能な素材も増えています。今迄大型の広告には溶剤インクが使われてきました。が、ソルベント(溶剤)インクはVOC(揮発性有機溶剤)等の環境負荷物質が含まれる事からヨーロッパではいち早くVOCとオゾンの発生しないUVインクの採用に走りました。日本でも今はラテックスかUVが主流になりつつあります。では単純にファブリック(ポリエステル素材)にUV印刷すればいいんだね? というとそう単純ではなく・・・。 理由はUVインクの強烈な臭いが繊維にしみ込んでしまって、飲食店などでは使えないだろう、というレベルです。ですがこれもUVインクを使える特殊なポリエステル素材というものを使えば可能です。

話を戻します。昇華転写もUV印刷も日本国内では最大幅3Mまで出来るみたいです。ですが例えば大手MIMAKI の3M幅の昇華転写プリンターは機械の上代が1500万円です。インクや生地など材料費を含めるとざっと2000万円の投資が必要ですから、出力できる会社さんも限られると、という訳です。

このように、ファブリックへのプリント、と言っても色々なノウハウがあります。今回は書きませんでしたが生地を使うということは「防炎加工済かどうか」という事が付きまといます。海外でとても使い勝手の良い生地が見つかって輸入しても日本とは検査内容や規格が違うので、日本防炎協会で防炎ラベルを取得するのはほぼ不可能、という悲しい現実があります。早く国際基準が出来るといいなあと思います。

ご検討されたい方はいつでもご相談下さいね。